寝る前にスマホを見ると眠れなくなるのはなぜ? ― 光と脳の"覚醒スイッチ"の仕組み

「寝る前についスマホを見てしまう」 そして、気づけばなかなか眠れない。

そんな経験はありませんか?

これは気合いや習慣の問題ではなく、体の仕組みによるものです。

仕組みはとてもシンプルで、以下の3つのメカニズムが重なり、入眠を妨げます。


    ① 光(ブルーライト)が体内時計をずらす

スマートフォンやタブレットの画面には、ブルーライト(青色光)が多く含まれて
います。白色LEDに多く含まれるこの青色光は、網膜に存在する特殊な神経細胞である
 ipRGC(intrinsically photosensitive retinal ganglion cells) を強力に刺激します。

ipRGC
メラノプシンという光受容タンパクを持ち、特に波長約480 nmの青色光に
高い感受性を示します。


ブルーライトがメラトニンを抑制するしくみ

1.    ブルーライトが ipRGC(メラノプシン細胞)を刺激
2.    視交叉上核(SCN)に「まだ昼間」という信号が送られる
3.    松果体からのメラトニン分泌指令が抑制される
4.    体が昼間と錯覚し、眠気が起きにくくなる 

メラトニンとは?― 眠りへ導くスイッチ

メラトニンは、体内時計に**「今日の活動を終えて、眠る準備を始めなさい」**
というシグナルを送る、睡眠モードへの切り替えスイッチです。

メラトニンが正常に上昇すると

・体温・血圧がゆっくり低下する
・覚醒レベルが下がり、眠りに入りやすくなる
・網膜の光への反応性が低下し、夜間刺激に過敏になりにくくなる

👉スマホのブルーライトはメラトニン分泌を抑制して体が"眠る準備"に入れなくなります。


■  ② 情報刺激が脳を覚醒させる

スマホは光だけでなく、コンテンツそのものも問題です。

・ SNS(他者との比較・感情的反応)
・ ニュース(不安・怒りの誘発)
・ 動画(視覚・聴覚への持続的刺激)

これらは脳にとって強い刺激となり、交感神経が優位な状態を作り出します。

2017年「The Journal of Psychiatric Research」誌から報告されたRCT
(ランダム化比較試験)では、夜間のブルーライトは、眠気を有意に低下させ、
体を覚醒状態に保つことが定量的に示されています。
Heo JY et al. "Effects of smartphone use with and without blue light at night in healthy adults." Journal of Psychiatric Research. 2017;87:61-70. PMID: 28017916.

👉情報刺激によって、リラックスすべき時間に脳が活動モードに入ってしまいます。


■  ③ 眠気のタイミングを逃す

人の眠気は**「睡眠圧(Process S)」と「体内時計(Process C)」**2つによって
決まります。

    眠気のピークには""があります。
参考コラム:「なぜ人は眠たくなるのか?睡眠を引き起こす2つの仕組み

スマホによって覚醒状態が続くと

・眠気のピークを逃す
・体内時計のシグナルとのズレが生じる
・結果として寝つきが悪くなる

👉「眠いのに眠れない」という状態が起こります。


    専門医からの提案


近年、「デジタルデトックス」という言葉が広く使われるようになりました。
本質は「スマホやSNSをやめること」そのものではなく、
就寝前の光刺激・情報刺激・感情刺激を減らすことにあります。

特に就寝前30〜60分は、
・スマホ
・タブレット
・PC
・刺激の強い動画やSNS
を避けることが、入眠しやすい状態を作るうえで有効です。


実際のランダム化試験では、就寝前のスマホ使用を4週間制限した群で、入眠時間の
短縮・睡眠時間の延長・睡眠の質の改善が確認されています。
He JW et al. "Effect of restricting bedtime mobile phone use on sleep, arousal, mood, and working memory." PLoS ONE. 2020;15(2):e0228756. 

難しい場合でも

・ナイトモード(ブルーライト軽減機能)をオン
・画面の明るさをできるだけ下げる

などで影響を軽減できます。

※ 大変恥ずかしい話ですが、正直に言うと、私自身も実践できていません。
光デバイスとの付き合い方は本当に難しい世の中ですね。
このコラムを書きながら人に伝える前に自分の生活も見直したいと思いました。


注意:こんな症状は睡眠学会専門医に相談を


光デバイスとの付き合い方に問題がないにもかかわらず

・寝つきが悪い状態が毎日のように続く(30分以上)
・夜中に何度も目が覚める
・日中の眠気が強く、生活に支障がある

のような症状が続く場合は、

・不眠症
・睡眠時無呼吸症候群(OSA
・概日リズム睡眠障害

などが関与している可能性があります。日本睡眠学会の専門医への相談をお勧めします。


■  参考コラム

・「光と睡眠の科学:体内時計を整える光の使い方
・「人はなぜ眠るのか?睡眠の役割と2つの調節メカニズム


■ 参考書籍

・「イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める!睡眠のしくみ   (単行本)
・「睡眠の科学・改訂新版 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか (電子書籍)
・「今さら聞けない 睡眠の超基本 (今さら聞けない超基本シリーズ)  電子書籍版

「寝る前についスマホを見てしまう」 そして、気づけばなかなか眠れない。

そんな経験はありませんか?

これは気合いや習慣の問題ではなく、体の仕組みによるものです。

仕組みはとてもシンプルで、以下の3つのメカニズムが重なり、入眠を妨げます。


    ① 光(ブルーライト)が体内時計をずらす

スマートフォンやタブレットの画面には、ブルーライト(青色光)が多く含まれて
います。白色LEDに多く含まれるこの青色光は、網膜に存在する特殊な神経細胞である
 ipRGC(intrinsically photosensitive retinal ganglion cells) を強力に刺激します。

ipRGC
メラノプシンという光受容タンパクを持ち、特に波長約480 nmの青色光に
高い感受性を示します。


ブルーライトがメラトニンを抑制するしくみ

1.    ブルーライトが ipRGC(メラノプシン細胞)を刺激
2.    視交叉上核(SCN)に「まだ昼間」という信号が送られる
3.    松果体からのメラトニン分泌指令が抑制される
4.    体が昼間と錯覚し、眠気が起きにくくなる 

メラトニンとは?― 眠りへ導くスイッチ

メラトニンは、体内時計に**「今日の活動を終えて、眠る準備を始めなさい」**
というシグナルを送る、睡眠モードへの切り替えスイッチです。

メラトニンが正常に上昇すると

・体温・血圧がゆっくり低下する
・覚醒レベルが下がり、眠りに入りやすくなる
・網膜の光への反応性が低下し、夜間刺激に過敏になりにくくなる

👉スマホのブルーライトはメラトニン分泌を抑制して体が"眠る準備"に入れなくなります。


■  ② 情報刺激が脳を覚醒させる

スマホは光だけでなく、コンテンツそのものも問題です。

・ SNS(他者との比較・感情的反応)
・ ニュース(不安・怒りの誘発)
・ 動画(視覚・聴覚への持続的刺激)

これらは脳にとって強い刺激となり、交感神経が優位な状態を作り出します。

2017年「The Journal of Psychiatric Research」誌から報告されたRCT
(ランダム化比較試験)では、夜間のブルーライトは、眠気を有意に低下させ、
体を覚醒状態に保つことが定量的に示されています。
Heo JY et al. "Effects of smartphone use with and without blue light at night in healthy adults." Journal of Psychiatric Research. 2017;87:61-70. PMID: 28017916.

👉情報刺激によって、リラックスすべき時間に脳が活動モードに入ってしまいます。


■  ③ 眠気のタイミングを逃す

人の眠気は**「睡眠圧(Process S)」と「体内時計(Process C)」**2つによって
決まります。

    眠気のピークには""があります。
参考コラム:「なぜ人は眠たくなるのか?睡眠を引き起こす2つの仕組み

スマホによって覚醒状態が続くと

・眠気のピークを逃す
・体内時計のシグナルとのズレが生じる
・結果として寝つきが悪くなる

👉「眠いのに眠れない」という状態が起こります。


    専門医からの提案


近年、「デジタルデトックス」という言葉が広く使われるようになりました。
本質は「スマホやSNSをやめること」そのものではなく、
就寝前の光刺激・情報刺激・感情刺激を減らすことにあります。

特に就寝前30〜60分は、
・スマホ
・タブレット
・PC
・刺激の強い動画やSNS
を避けることが、入眠しやすい状態を作るうえで有効です。


実際のランダム化試験では、就寝前のスマホ使用を4週間制限した群で、入眠時間の
短縮・睡眠時間の延長・睡眠の質の改善が確認されています。
He JW et al. "Effect of restricting bedtime mobile phone use on sleep, arousal, mood, and working memory." PLoS ONE. 2020;15(2):e0228756. 

難しい場合でも

・ナイトモード(ブルーライト軽減機能)をオン
・画面の明るさをできるだけ下げる

などで影響を軽減できます。

※ 大変恥ずかしい話ですが、正直に言うと、私自身も実践できていません。
光デバイスとの付き合い方は本当に難しい世の中ですね。
このコラムを書きながら人に伝える前に自分の生活も見直したいと思いました。


注意:こんな症状は睡眠学会専門医に相談を


光デバイスとの付き合い方に問題がないにもかかわらず

・寝つきが悪い状態が毎日のように続く(30分以上)
・夜中に何度も目が覚める
・日中の眠気が強く、生活に支障がある

のような症状が続く場合は、

・不眠症
・睡眠時無呼吸症候群(OSA
・概日リズム睡眠障害

などが関与している可能性があります。日本睡眠学会の専門医への相談をお勧めします。


■  参考コラム

・「光と睡眠の科学:体内時計を整える光の使い方
・「人はなぜ眠るのか?睡眠の役割と2つの調節メカニズム


■ 参考書籍

・「イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める!睡眠のしくみ   (単行本)
・「睡眠の科学・改訂新版 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか (電子書籍)
・「今さら聞けない 睡眠の超基本 (今さら聞けない超基本シリーズ)  電子書籍版
・「中学校「みんいく」ハンドブック ~よい睡眠を実践しよう~ (単行本)


【執筆】
星野哲朗
日本睡眠学会 指導医・総合専門医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医
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