光と睡眠の関係

■ 光には大きく2つの効果があります。
メラトニン分泌の抑制
体内時計の「時間」をずらす(前進・遅延)
これらは似ていますが、全く同じメカニズムではないことも分かってきています。

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■ いつ光を浴びるかで効果が変わる
朝〜午前中の光
→ 体内時計を「前に進める(前進)」
→ 早寝早起きの方向に働く
夕方〜夜の光
→ 体内時計を「後ろにずらす(遅延)」
→ 寝る時間が遅くなる方向に働く

また、体内時計は一日の光の総曝露量や累積的な影響を評価しており、

5分程度の短い明るい光の繰り返し
間欠的なフラッシュ光
でも、トータルとして概日位相を動かしてしまうこと考えられています。

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■ 日中の明るい光は「よく眠るための投資」
しっかりした日中の光曝露は、次のような効果と関連しています。
睡眠時間がやや長くなる
寝つきが良くなる
徐波睡眠(深いノンレム睡眠)が増える
「よく寝た」という主観的な睡眠の質が改善する

とくに、
屋外で過ごす時間が1時間増えるごとに、就寝時間が約30分早まる
日照時間が短く夜が長い季節は、メラトニン分泌の時間帯も伸び、その分「眠る時間」も伸びやすい

■ 結論:
「よく眠りたい人ほど、日中に“ちゃんと明るい光”を浴びておくことが重要」ということです。

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■ 夜の人工光・スマートフォンが睡眠を乱すしくみ
現代の生活では、夕方〜夜にもかなりの人工光を浴びています。
この時間帯は、体内時計が「遅らされやすい」最も敏感なゾーンです。

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■ 夜のLED照明・ディスプレイがもたらす影響
電子書籍リーダーやタブレットで、就寝前4時間に本を読むと:
①寝つきが悪くなる(入眠潜時の延長)
②夕方の眠気が減る
③メラトニン分泌が減る
④翌朝のスッキリ感が低下
⑤体内時計が後ろにずれる

就寝前のスマートフォン使用は:
①自己申告の睡眠トラブル増加
②睡眠効率低下
③入眠までの時間延長
④総睡眠時間の短縮
などと関連するという報告が複数あります。

つまり、「夜の明るい・青白い光」は、少なくとも前半の睡眠を浅くし、体内時計を遅らせる方向に働くと考えられます。

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■ 光と気分・日中のパフォーマンス
光は、睡眠だけでなく「気分」にも大きく関わります。
セロトニンなどの神経伝達物質の働きを調節
体内時計・睡眠リズムを整えることで、二次的に気分を安定させる

このため、医学の世界では「高照度光療法(Bright Light Therapy)」が、
抑うつ気分
睡眠リズムのずれ
高齢者の活動性低下
などに対する治療・補助療法として使われています。

日常レベルで言えば、
「朝しっかり光を浴びる生活」は、
よく眠れるだけでなく、“気分のベース”を安定させることにもつながります。

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■ 光デバイスと「光のタイミング」の考え方
朝:
目覚めのタイミングで徐々に明るくする(ドーンシミュレーター)
起床後すぐにしっかりした光を浴びることで、体内時計を前進させ、日中の覚醒度を高める

日中:
室内でもある程度の照度・スペクトル(短波長成分を含む白色光)を確保し、「屋外ほどではないが、体内時計にとって意味のある明るさ」を与える

夜:
逆に青色成分の少ない、やや暖色で弱めの光に切り替える
スマホ・PCは明るさ・色温度を落とす or 時間を決めて使う

「いつ・どんな光を浴びるか」をデザインすることが、睡眠と体内時計のマネジメントそのものになります。

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■ 光デバイスを選ぶ際は何ルクス(明るさ)?というポイントに注目してください。
1000ルクス:日中の覚醒度を高めるための、一般的な生活環境における現実的な目標値として考えられます。

2500ルクス以上:体内時計そのものを効果的に「動かす」(位相シフトさせる)ための、医学的な治療・介入(光療法など)で検討される基準値として知られています。

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■ 光デバイスを選ぶ際は目的も明確にしてください。

①自然な目覚めをサポートする(一般的な光目覚まし)
多くの一般的な光目覚まし時計は、寝室全体を徐々に明るくすることで、日の出のような環境を作り出し、自然な目覚めを促すことを目的としています。

照度の目安:数百ルクス〜1,000ルクス程度
目的: アラーム音のストレスを減らし、快適に起きる。 寝起きの気分を良くする。
特徴:これらの光は、目覚ましとしての役割は果たしますが、睡眠時間が不足していたら効果は乏しくなります(人によっては効果なし)。
また光を浴びる面積が小さいため、寝返りをして顔が背くと効果が弱まる場合があります。
👉【参考デバイス一覧はこちら】
フィリップス ・ウェイクアップライト Philips Wake-Up Light HF3520/[並行輸入品]

②体内時計をリセットする(高照度デバイス)
体内時計そのものを強く調整し、根本的に「早寝早起き」の体質にしたい、あるいは日中のパフォーマンスを劇的に高めたい場合は、より強力な光が必要です。

照度の目安:2,500ルクス以上
目的:体内時計を前進させ、夜間の寝つきを良くする。
特徴:これらのデバイスは「高照度ライト」や「光療法機器」と呼ばれることも多く、顔に光を当てるように設計されています。
朝、決まった時間に15〜30分程度浴びることで、夜のメラトニン分泌を促す
スイッチが入ります。
👉【参考デバイス一覧はこちら】(※リンク挿入)

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■ ご使用前の注意(医師として一言)
高照度の光機器を使う際に、以下の人では注意または眼科的評価が必要。

① 眼科的な基礎疾患がある人(眼科チェック推奨)
網膜や眼の疾患
(網膜剥離、網膜色素変性症、緑内障など)
網膜に影響しやすい全身疾患
(糖尿病など)
白内障手術後、水晶体の摘出後
高齢者(加齢黄斑変性のリスクが高い)

② 光感受性を高める薬を服用している人(注意が必要)
抗精神病薬(フェノチアジン系)
抗うつ薬(イミプラミン)
気分安定薬(リチウム)
利尿薬(ヒドロクロロチアジド)
8-メトキシソラレン
心血管系薬剤(プロプラノロール、アミオダロン)
クロロキン
抗生物質(テトラサイクリン)

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■ まとめ:光を「設計する」ことで、睡眠と1日の質を変えられる
体内時計の中枢は脳の視交叉上核(SCN)で、「目に入る光」が最大のリセットスイッチ。
日中の明るい光は、
→ 体内時計を整え、
→ 睡眠の質を上げ、
→ 気分や日中のパフォーマンスにも良い影響。

夜の強い・青白い光やディスプレイは、
→ メラトニンを抑え、
→ 体内時計を遅らせ、
→ 寝つきと睡眠の深さを悪くする。

「どの時間帯に、どのような光を浴びるか」を少し意識するだけで、
睡眠・体調・気分は大きく変わります。

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■ まとめ
光の量・質・タイミングを整えることは、
睡眠を整える上で非常に大きな効果を持つアプローチです。
あなたの生活に合った“最適な光環境”を見つける参考になれば幸いです。

【監修】
星野哲朗(日本睡眠学会 指導医・総合専門医)
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