朝起きられず目覚ましを何回もかける人へ
目覚ましを何回もかけないと起きられないのはなぜか
診察でよく質問されるテーマです。
目覚ましを何回もかけないと起きられない。
それは単なる癖ではありません。
睡眠のどこかに問題があるサインです。
眠気は気合いで改善するものではありません。
眠気は、睡眠圧と体内時計で決まります。
つまり、何回もアラームが必要な人は、「起き方」が悪いのではなく、「眠り方」に問題があることが多いのです。
👉参考コラム
「なぜ人は眠たくなるのか? ― 睡眠を引き起こす2つの仕組み」
■ 目覚ましを何回もかける人に共通すること
目覚ましを何回もかけないと起きられない人は、多くの場合、次の3つに当てはまります。
① 睡眠リズムが乱れている
② 睡眠時間が足りていない
③ 睡眠の質が悪い
リズムが乱れれば、寝る時間も起きる時間も乱れます。
睡眠時間が足りなければ、朝の眠気は強くなります。
睡眠の質が悪ければ、長く寝ても起きられません。
だから、アラームの回数だけ増やしても解決しません。
見るべきなのは、起きる何分前から何回鳴らすかではなく、睡眠そのものです。
この考え方は大人から子どもまで共通です。
① 睡眠リズムが乱れている
睡眠リズムの乱れといっても、単なる夜更かしだけではありません。
体内時計そのものが後ろへずれている人もいれば、平日と休日の生活差で毎週リズムを崩している人もいます。
こうした状態では、起きるべき時間になっても、脳がまだ十分に覚醒できていません。
朝起きられないのは意志の問題ではなく、起きる時刻に体内時計が合っていないことがあります。
👉参考コラム
「概日リズム睡眠障害とは?体内時計がずれる原因と6つのタイプ」
典型的なのは、
・夜更かし
・休日の寝だめ
・平日と休日で起床時刻が大きく違う生活
・夜のスマホや強い光
です。
平日に無理やり早起きして、休日に寝て戻す。
これは回復ではありません。
リズムをさらに乱していることがあります。
月曜の朝ほどつらい人は、この影響を強く受けています。
夜の光も軽く見てはいけません。
光は体内時計を動かします。
夜に明るい画面を見続ければ、眠る時刻は後ろへずれます。
朝起きにくくなるのは当然です。
② 睡眠時間が足りていない
単純に、寝不足です。
必要な睡眠時間が足りていなければ、体はまだ起きる準備ができていません。
その状態で目覚ましを何回鳴らしても、不足した睡眠が埋まるわけではありません。
成人では7時間以上の睡眠が必要とされることが多く、睡眠不足は注意力、反応速度、判断力、作業能力を確実に落とします。
しかも厄介なのは、本人がその低下を過小評価しやすいことです。
「起きられないから目覚ましを増やす」
この発想はずれています。
正しくは、
起きられないほど睡眠が足りていないなら、先に寝るべきです。
何回もアラームをかけてようやく起きる。
それは便利な工夫ではありません。
朝まで強い睡眠圧が残っているということです。
👉参考コラム
「ヒトは一日何時間眠ればよいのか」
③ 睡眠の質が悪い
睡眠時間を取っているのに朝がつらい。
この場合は、睡眠の質が悪い可能性を疑うべきです。
途中で何度も目が覚める。
深く眠れていない。
睡眠が細かく途切れている。
こういう人は、布団に入っていた時間のわりに回復できていません。
こうした症状は診療でよく聞きます。
ですが、すぐに睡眠薬という話ではありません。
睡眠の質が悪くなる背景としては、
・睡眠時無呼吸
・周期性四肢運動
・むずむず脚症候群
・鼻づまりなどの呼吸の問題
・飲酒、カフェインなどの生活習慣の問題
・室温、音、光などの環境要因
など多岐にわたります。
特に、いびきが強い、寝ても疲れが取れない、日中も眠い。
こういう人は、目覚ましの問題ではありません。
睡眠時無呼吸症候群(OSA)のように、夜の睡眠そのものが壊れている可能性があります。
👉参考コラム
「イビキが気になったら最初にやること― 専門医が解説する受診前に知っておくべきこと 」
また、夜になると脚がむずむずする、横になると不快感が強くなる、眠りに入りにくい、周期的に足や腕がピクッと動いて中途覚醒してしまう。
こういう人では、むずむず脚症候群や周期性四肢運動障害などの睡眠障害が、朝の起きづらさの背景にあることがあります。
👉参考コラム
「むずむず脚症候群という病気をご存じですか?」
寝酒は入眠を早めることがありますが、解決策にはなりません。
眠れた気がしても、睡眠の質は悪化します。
カフェインも同じです。
頼りすぎると、夜の睡眠を壊し、翌朝さらに起きにくくなる。
悪循環です。
👉参考コラム
「アルコールと睡眠 寝酒で“眠れる”は本当か?」
「カフェインは何時間前までOK? 睡眠を壊さないための正しい知識」
■ 何回も目覚ましをかける行為自体が問題
何回も目覚ましをかけるという行為は、
鳴る → 起きる → 止める → もう一度寝る
を繰り返しているだけです。
すでに問題のある睡眠の最後の時間を、さらに悪くしているだけです。
自然に眠りを終えるわけでもない。
一度でしっかり起きるわけでもない。
いちばん中途半端です。
一回のスヌーズで病気になるわけではありません。
でも、それが毎朝の前提になっているなら、すでに睡眠のどこかが崩れていると考えるべきです。
■ まとめ
目覚ましは、何回もかけるべきではありません。
結論はこれです。
繰り返しになりますが、何回もかけないと起きられない人は、
・睡眠リズムが乱れている
・睡眠時間が足りていない
・睡眠の質が悪い
このどれか、あるいは複数を抱えていることが多いです。
朝の問題に見えて、実際には夜の問題です。
起き方の問題に見えて、実際には眠り方の問題です。
目覚ましの回数を増やす前に、
睡眠を、リズム・量・質で見直すべきです。
※注意※
質・リズム・量を整えても朝起きにくい状態が続く場合は、過眠症や他の疾患が関与している可能性があります。
早めに専門医へ相談しましょう。
👉参考コラム
「睡眠の悩みはどの科を受診する?睡眠専門医の探し方」
「日本睡眠学会の総合専門医ってどんな資格?」
【執筆】
星野哲朗
日本睡眠学会 指導医・総合専門医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医