アルコールと睡眠の関係
正しい知識があれば、楽しい飲酒と良い睡眠の両立を目指せます
1. アルコールの睡眠構築(sleep architecture)への影響
※アルコールの影響は摂取量に依存します。少量または適量であれば以下の影響は
あまりないので心配しないでください。
大量飲酒した場合は以下にご注意ください。
① 入眠潜時(寝つき)は短くなります ― “眠りの前借り”
アルコールには中枢神経を抑制する作用(GABA作動性増強)があるため、
飲酒後は 入眠潜時(寝つくまでの時間)が短縮 します。
そのため、多くの方が
「寝酒をすると寝つきが良い」
と感じられるのです。
しかし、これは 一時的な鎮静効果にすぎず、睡眠の質を保証するものではありません。
② 深睡眠(ノンレム睡眠ステージ3)の変化 ― 前半は増加、後半は減少
アルコール摂取後の睡眠前半では、
深いノンレム睡眠(ステージ3)が増加し、
まずは「深く眠れた」ように感じます。
しかし、アルコールが代謝され、
血中アセトアルデヒド濃度が上昇する睡眠後半になると状況は一変します。
- 交感神経活動が亢進(身体が“警戒モード”に)
- 心拍数の上昇
- 深睡眠の顕著な減少
その結果、睡眠全体のバランスが崩れ、回復力が大きく低下します。
③ REM睡眠の乱れ ― “抑制 → リバウンド”
アルコールは睡眠前半のREM睡眠を抑制します。
しかし代謝が進む睡眠後半では、
生理的に睡眠後半に増えるREMが、さらに増えすぎる REMリバウンド(反動でREM睡眠が過剰に増加)となり、自律神経の乱れが生じます。
④ 中途覚醒が増えます ― 代謝・アセトアルデヒド・利尿作用の影響
アルコール代謝が進行すると、
- 覚醒作用(交感神経亢進)
- 体温リズムの乱れ
- 利尿作用による夜間トイレ
- 口渇・喉の渇き
- 動悸・発汗
これらが複合的に重なり、中途覚醒が増加します。
その結果、
「眠ったはずなのにまったく回復していない」という状態が生じます。
⑤ 睡眠時無呼吸の悪化 ― 咽頭筋弛緩とREM増加の二重悪化
アルコールには筋弛緩作用があるため、
- 舌根沈下が起こりやすくなる
- 咽頭筋が弛緩する
- いびきが悪化する
- 軽症の方でも無呼吸が一時的に中等症〜重症レベルに
さらに、睡眠後半のREMリバウンド+REM期特有の抗重力筋トーヌス低下により、無呼吸がより悪化します。
→ 睡眠時無呼吸症候群(OSA)の方は特に注意が必要です。
→ CPAP治療中の方は、飲酒時のCPAP使用を必ず徹底してください。
■ 結論(医師の総括)
アルコールは“寝つき”のみを見ると良いようにみえます。
しかし睡眠前半の深睡眠増加は、一時的な鎮静による見せかけです。
- 睡眠後半の睡眠構造は深刻に乱れる
- REM睡眠は抑制 → 過剰リバウンド
- 中途覚醒が大幅に増加
- いびき・無呼吸は確実に悪化
つまり、
「入眠は良いが、睡眠の質は確実に悪化する」。
これがアルコールの睡眠構築に対する医学的本質です。
2. 睡眠専門医師としての“本音”
現実には、飲みたい日もあります。
飲まなければならない日もあります。
お付き合い、お祝い、会食、仕事、コミュニケーション……
それが “大人の事情” というものです。
そして多くの方の本音はこうです。
「飲む日は飲む。でも翌日のパフォーマンスは落としたくない。」
「飲んだ翌日もスマートに働きたい。二日酔いの姿は見せたくない。」
だから結論はひとつです。
👉 では、“上手に飲む”しかありません。
医学的に正しい知識があれば、
ダメージを最小限に抑え、翌日もきちんと動けるかっこいい大人でいることができます。
そのために、以下のポイントだけは必ず押さえてください。
3. 飲酒時の医学的対策(上手に飲むための5原則)
① ビタミンB1(補酵素)は「飲む前」が最強
アルコールは
エタノール → アセトアルデヒド → 酢酸
という代謝過程を経ます。
その裏で膨大な量の ビタミンB1(チアミン) が消費されます。
ビタミンB1は代謝回路の“ガソリン”であり、枯渇すると代謝が詰まり、二日酔いの原因になります。
● ビタミンB1摂取のベストタイミング
- 飲む前:◎(最重要)
- 飲酒中:○(長時間飲酒時)
- 飲酒後:○
- 翌朝:◎(残ったアセトアルデヒド処理)
フルスルチアミン製剤という薬剤があります。
日常的なセルフケアとしては ビタミンB1サプリが有用 です。
② ナイアシン(NAD⁺)も大量に消費されます
アルコール代謝では NAD⁺の枯渇 が起こりやすく、
だるさ・倦怠感の原因となります。
NAD⁺を補うためにも、後述する 適度な炭水化物 が有効です。
③ 脱水対策 —— アルコールは強力な利尿剤です
ビール1杯飲むなら、
同量の水1杯でようやく±0 という感覚です。
脱水は睡眠をさらに悪化させるため、
飲酒量=水分量 を目安に摂取してください。
④ 適度な炭水化物 —— 身体が求めるのは生理的反応です
アルコールは糖新生を抑制し、低血糖になりやすくなります。
そのため、炭水化物を欲するのは 正常な身体の反応 です。
- おにぎり半分
- 雑炊
- うどん
- 軽い麺類
これらを“代謝サポート”として摂るのは非常に理にかなっています。
⑤ 飲む時間帯と“飲み終えるタイミング”が睡眠を左右します
就寝の3時間前までに飲み終える。
これだけで翌日の睡眠の崩れ方が大幅に改善します。
逆に、寝る直前まで飲むのは 翌朝のパフォーマンスを捨てる飲み方 です。
4. 推奨:ビタミンB1(チアミン)サプリメントの活用
■ ① ビタミンB1高含有タイプ
チアミン(ビタミンB1)含有量が十分にあるもの。
飲酒前・飲酒後・翌朝いずれにも使いやすい。
■ ② ビタミンB群複合タイプ
B1だけでなく、ナイアシン(B3)・B6・B12 なども補える。
NAD⁺の枯渇対策にも適しています。
迷われる方のために、安全性の確認できるものをいくつか掲載しています。必要に応じて参考にしてください。
👉【参考サプリ一覧はこちら】
◆ 最後に(医師としてのまとめ)
仲間と飲酒、ビジネスで飲酒、色々なシチュエーションがありますが、
楽しい飲酒と良い睡眠を両立するには 戦略的に飲むこと が大切です。
- ビタミンB1は“燃料”として事前補給
- ナイアシン負荷を考えて適度に炭水化物
- ビール1杯=水1杯
- 就寝3時間前までに飲み終える
- OSAがある方は悪化を前提に対策を徹底
知識ゼロで飲むと身体は壊れます。
知識を持って飲めば、大人としての余裕と強さになります。