むずむず脚症候群という病気をご存じですか?
“眠れない原因”として意外と多い疾患です
夜になると脚が落ち着かない、うずくような不快感が出る。横になると悪化し、歩いたり動かすと一時的に楽になる。しかし、いざ寝ようとするとまた出てきて眠れない。その不快感は言葉では表現しにくいものです。「むずむずする」「虫が脚の中を這うような感覚」「火照る」など。
また病名からは脚だけに生じる病気と思われがちですが、腕や下腹部など様々な部位に生じます。
むずむず脚症候群(RLS:Restless Legs Syndrome)は“珍しい病気”と思われがちですが、実際には世界的には 5〜10%前後(アジア人では 1.8〜4%)にみられる “common disease(ありふれた疾患)” です。そして女性に多いという性差が人種間で共通しています。
RLSの症状
① 下肢を動かさずにはいられない衝動と異常感覚
「座位や臥位でじっとしていられない」「絶えず脚を動かしたり、立ち上がって歩きたくなる」
② 安静で悪化する
「布団に入ってしばらくするとじっとしていられなくなる」「夜目が覚めると脚が不快で再入眠がむずかしい」「夕食後にソファーで横になると脚に違和感を感じる」
症状は夕方〜夜に出現しやすく、電車や映画館など動けない環境ほど悪化します。
③ 運動により不快感が軽減する
脚をもむ・歩く・さするなどで不快感が軽くなることが多い。高齢者では、頻回の歩行が“せん妄”と誤認されることがあり注意が必要です。
④ 夕方から夜に出現または増悪する
初期は夜間中心だが、進行すると日中にも出現し、長距離移動・会議・映画鑑賞などがつらくなる方もいます。
⑤ 重要な併存症状:周期性四肢運動
睡眠中に下肢が周期的に短く動く症状で、足指の背屈・足首の背屈・膝や股関節の屈曲が代表的。RLS患者の 8 割以上で認められるが、存在=確定診断ではない。
RLS罹患者の 75% に不眠が生じ、その結果、日中の認知機能低下・QOL悪化が報告されています。
"Restless legs syndrome prevalence and impact: REST general population study." Arch Intern Med (2005)
「本人しかわからないつらさ、言葉では表現しようのないつらさ」——これがむずむず脚症候群です。
RLSの病態
① 遺伝的素因
45歳以前発症では約30%で家族集積性があり、常染色体優性遺伝と考えられています。
② 鉄不足
血清鉄は夜間に低下し、これが症状の日内変動(夕方悪化)と関係。鉄剤は血清鉄欠乏の有無にかかわらず有効という報告もあり。
③ ドパミン作動系の異常・アデノシン作動系低下・グルタミン酸過剰興奮
④ ビタミンD・カルシウム・リン不足
RLSの分類
RLSは ①特発性(一次性) と ②二次性(続発性) に分かれます。
① 特発性(一次性):“体質・中枢由来”で起こるタイプ。
・家族歴
・遺伝的要因
・鉄代謝異常
・ドパミン神経(A11系)機能低下
② 二次性(続発性):以下背景が鉄やドパミン機能を乱し症状につながるタイプです。
・鉄欠乏性貧血
・葉酸欠乏
・ビタミンB12欠乏
・慢性腎不全(透析)
・心不全(機能的鉄欠乏)
・関節リウマチ
・多発神経炎
・脊髄疾患
・パーキンソン病
・ドパミン遮断薬(抗精神病薬・制吐剤)
・胃切除後
・妊娠
・カフェイン過剰摂取
RLSは「病院で診てもらうべき疾患」
特に
・妊娠
・透析
・心不全
・胃切除後
・薬剤性
に該当する場合、自己判断でのサプリ・民間療法は危険です。
症状が思い当たる場合は、専門の医療機関へ
夜のむずむず、横になる苦痛、眠れない——
この背景に RLS が隠れていることがあります。
RLS は、原因・重症度の評価を行い、個別に治療方針が必要な疾患です。気になる場合は無理をせず医療機関に相談してください。