肥満と睡眠時無呼吸(OSA)の悪循環

睡眠時無呼吸(OSA)と肥満の関係は、日常生活の中でもよく話題になります。

「肥満があるとOSAが起こりやすい」
これは広く知られている事実です。

しかし実際には、それだけではありません。
OSAが続くことで体重管理が難しくなり、結果としてOSAがさらに悪化しやすくなるという“悪循環”が生じる可能性があります。

この関係を理解しておくことは、今後の健康管理を考えるうえでも重要です。

そこで今回は
体重変化とOSA重症度の関係
②OSA
が肥満側に傾きやすくなる要素(身体活動・代謝)
を整理します。


1)体重の変化とOSAの重症度変化

体重とOSAの関係を語るうえで、最も有名なデータの一つがウィスコンシン・スリープコホート(JAMA 2000)です。ウィスコンシン州の勤労者690人を無作為に抽出し、約4年おきに睡眠検査を行って追跡し、体重変化とAHI(無呼吸低呼吸指数)の変化を検討した前向き研究です。 

Peppard PE, Young T, Palta M, Dempsey J, Skatrud J. Longitudinal study of moderate weight change and sleep-disordered breathing. JAMA. 2000;284(23):3015–3021.

この研究では、体重が安定している人と比べて、
体重が10%増えるとAHIが約32%増加
体重が10%減るとAHIが約26%低下
・体重の10%増加は、中等症以上(AHI15)になるオッズを約6にする

という結果が示されています。
体重の増減はOSAの重症度と関係が強いため、体重管理はOSAの評価・治療設計を考える際の重要な要素になります。 


2OSAが肥満側に傾きやすくなる要素①:身体活動量(physical activity

OSAは夜間の呼吸イベントだけでなく、日中の眠気や疲労を伴うことが多く、生活全体にも影響し得ます。ここについては、感覚論ではなく、客観測定をまとめた報告があります。

OSA患者の身体活動量を客観的に評価した報告では、1日歩数の平均が5,388歩/日で、一般的に目安とされる基準(1万歩/日)より低いことが示されています。

Mendelson M et al. Obstructive Sleep Apnea Syndrome, Objectively Measured Physical Activity and Exercise Training Interventions: A Systematic Review and Meta-Analysis. Front Neurol. 2018;9:73

個々の患者で差はありますが、「OSAのある集団では身体活動量が少ない傾向がある」という点は、肥満との関係を考えるうえで押さえておきたいポイントです。 


3OSAが肥満側に傾きやすくなる要素②:代謝(インスリン抵抗性など)

もう一つの重要なポイントは代謝です。
OSAでは、睡眠中の呼吸障害に伴う低酸素や睡眠分断が起こります。
こうした負荷は、交感神経や炎症、脂肪酸動員などを介して、インスリン抵抗性や脂質代謝異常に関わり得ることが、機序研究のレビューで整理されています。 

Drager LF et al. Metabolic consequences of intermittent hypoxia: relevance to obstructive sleep apnea. Best Pract Res Clin Endocrinol Metab. 2010;24(5):843
851. 
本文内のFigure①がとてもわかりやすいので是非参考にしてください。

「食事・運動」だけで語られがちな体重管理ですが、OSAがあることで代謝面の条件が不利になり得る――この見方を持っておくと、肥満とOSAの関係をより立体的に理解できると思います。 


まとめ:OSA ⇔ 肥満の悪循環

整理すると流れはシンプルです。

・肥満 → 咽頭周囲脂肪などを介して気道が狭くなり、OSAが悪化しやすい
OSA → 眠気・疲労で活動が減り、さらに代謝面でも不利になり得る
・その結果、体重が増えやすく/減りにくくなり、またOSAが悪化する

このように、肥満がOSAを悪化させ、OSAがさらに肥満を後押しする形で、
双方向の“循環(bidirectional relationship)”が成立し得ます。

だからこそ、体重だけに狙いを絞るのではなく、OSAという睡眠障害そのものを
きちんと評価・治療して「眠気が減って動ける」「日中のコンディションが整う」
状態を作り、そのうえで運動と食事管理を組み立てていくことが、現実的で続け
やすい戦略になります。

外来でもよくお伝えしています
良い睡眠
👉 良い運動と正しい知識に基づく食事管理
👉 良い減量
👉 健康
を目指したいですね。


■  参考コラム
・「痩せればいびき・睡眠時無呼吸(OSA)は治るのか?
・「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA):その① 定義・疫学
・「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA):その② 病態・リスク・合併症
・「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA):その③ 治療  “あなたの無呼吸は、どのタイプですか?

【執筆】
星野哲朗
日本睡眠学会 指導医・総合専門医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医

 

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