昼寝は何分がベスト? 研究データから見る最適な昼寝時間
昼寝は、長ければ長いほど良いわけではありません。
短すぎると効果が乏しく、長すぎると起きた直後にぼんやりします。
つまり、昼寝には個々に“ちょうどいい長さ”があります。
結論から言うと、
すぐ仕事に戻るなら10〜20分前後、記憶まで狙うなら30分前後が有力です。
このコラムでは、昼寝時間に関する代表的な研究を紹介します。
■ 科学が示す「昼寝は何分がベストか」
① 10分昼寝が最も効率がいい
Brooks & Lack, 2006
夜間睡眠を約5時間に制限した健康な若年成人24人(普段の睡眠状態は良好、習慣的な昼寝習慣なし)を対象に、昼寝なし、5分、10分、20分、30分の条件を比較した研究です。
結果はかなり明快で、10分昼寝は、眠気・疲労・活力・認知パフォーマンスを起床後すぐ改善し、その効果は最大155分持続しました。
一方で、5分昼寝は効果が乏しく、20分昼寝は効果が出るまで少し時間がかかりました。30分昼寝では、起きた直後に一時的なパフォーマンス低下がみられ、睡眠慣性(sleep inertia)が示されました。
※睡眠慣性とは起きた直後に頭や体がまだ完全に目覚めておらず、ぼーっとして、判断・反応・集中が落ちる状態です。
つまり、「すぐ効いて、すぐ動ける」という点では10分昼寝が最も効果的だったと
されています。
② 短い昼寝はすぐ効く、長い昼寝はあとで効く
Lovato & Lack, 2010
昼寝の認知機能への影響をまとめたレビューです。
このレビューでは、5〜15分の短い昼寝は、起床後ほぼすぐに効果が出て、1〜3時間程度持続すると整理されています。
一方で、30分を超える長めの昼寝は、起きた直後に睡眠慣性によるパフォーマンス低下を起こすことがあるものの、その後はより長く認知機能改善が続く可能性があります。
要するに、短い昼寝は“即効型”、
長めの昼寝は“立ち上がりは遅いが持続型”ということです。
また、昼寝のタイミングとしては早い午後が最も有利とされています。
③ 30分昼寝は、実用性と利益のバランスがよい
Leong et al., 2023
21〜35歳の健康な若年成人32人、平均年齢25.63歳、男性12人・女性20人を対象として10分・30分・60分の昼寝の効果を比較した研究です。参加者は、もともと夜間睡眠が6〜6.5時間と短い習慣を持つ人に限定され、既知の健康障害や睡眠障害がないこと、長期服薬をしていないこと、シフト勤務でないことなどが条件でした。なお、56.25%は少なくとも週1回以上昼寝する習慣がありました。
結果として、10〜60分のどの昼寝でも、気分改善と眠気の軽減は得られました。
ただし、認知面では差があり、記憶のエンコード改善がはっきり認められたのは30分昼寝だけでした。
一方で、30分昼寝と60分昼寝では、起床直後に睡眠慣性がみられました。
ただし、そのぼんやり感は30分以内に解消しています。
著者らは、最適解は一つではありませんが、実用性と利益のバランスでは30分昼寝が
効果的とされています。
④ メタ解析でも、午後の昼寝は認知機能を改善する結果
Leong et al., 2022
午後の昼寝が認知機能に与える影響を検討した系統的レビュー・メタ解析です。
54研究・60サンプルを統合解析した結果、昼寝は認知機能全体を小〜中等度改善
しました(Cohen’s d = 0.379)。
特に改善が認められたのは
・覚えた内容を保ち、思い出す力
・動作や手順を身につける力
・注意を切らさずミスや見落としを防ぐ力
・処理速度
なお、年齢、昼寝時間、昼寝開始時刻、昼寝習慣、前夜の睡眠不足の有無による有意な差はみられませんでした。
つまり、研究全体で見ると、「昼寝は良いこと」ただし「何分が絶対ベスト」と断定するより、目的に応じて使い分ける方が合理的ということになります。
■ まとめ
このテーマの答えは、完全には一つではありません。
ただ、研究を並べるとかなり整理できます。
・すぐ仕事に戻りたいなら、10分前後
・一般的な昼寝なら、10〜20分
・記憶や学習まで少し狙うなら、30分前後
・ただし30分以上は、起床直後のぼんやりに注意
結論から言います。
長く寝ればよいわけではありません。
昼寝にも、最適な長さがあります。
自分の特性や目的に応じてベストな昼寝時間を探ってみましょう。
■ 参考コラム
・「研究データから見る寝不足とパフォーマンス低下」
・「睡眠不足で学習効率はどうなる? ― 研究データから読み解く正しい知識」
・「ヒトは一日何時間眠ればよいのか」
・「寝だめはできるのか? ― 研究データから見る寝だめの限界」
・「なぜ人は眠たくなるのか? ― 睡眠を引き起こす2つの仕組み」
・「寝る前にスマホを見ると眠れなくなるのはなぜ? ― 光と脳の"覚醒スイッチ"の仕組み」
・「カフェインは何時間前までOK? 睡眠を壊さないための正しい知識」
星野哲朗
日本睡眠学会 指導医・総合専門医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医