CPAP治療のトラブルシューティング Vol.2 鼻づまりでCPAPを外してしまう
よく相談される質問のひとつ
「CPAPをつけたいのに、鼻がつまって苦しい」
実は、CPAPが続かない最大の理由のひとつに
“鼻づまり(鼻閉)” があります。
そして鼻づまりといっても原因は1つではなく、複数あり、それぞれ対策が異なります。
この総合ページではまず全体像をわかりやすく示し、
そこから各原因の 詳細コラムへリンクする構造 にしています。
■ 鼻腔機能とCPAP使用に関する最新のシステマティックレビュー
有名専門誌 Sleep and Breathing に掲載された最新の systematic review
Nasal function and CPAP use in patients with obstructive sleep apnoea: a systematic review. Sleep and Breathing 26.3 (2022): 1321–1332.
では、次のことが明確に示されました。
まずSystematic Review(システマティックレビュー)とは?
世界中の研究を網羅的に集め、信頼性で重みづけし、
最も確かな結論を導く手法のこと。
医学的エビデンスでは 最上位クラス に位置づけられています。
その高信頼エビデンスで示された結論
① 鼻腔の断面積が広いほど
② 鼻抵抗が低いほど
→ CPAPの継続率が高く、必要治療圧も低くなる
つまり、
「鼻が通っているほどCPAPは使いやすい」
という強固な科学的裏付けがあります。
■ 鼻づまりがあると、CPAPがつらくなりやすい理由
・鼻腔抵抗が高くなり、CPAPから送られてくる風が吸いにくく、吐きにくくなる
・口呼吸になり舌根沈下 → 無呼吸悪化
・または開口リーク(開口してしまい口から空気が漏れる) → 中途覚醒・乾燥
・マスクリークが増える
結果として、終夜の継続使用が困難になる。
鼻呼吸が確保されないCPAPは、ほぼ継続できません。
逆に言えば、鼻が通れば CPAP はとても安定します。
■ では、鼻づまりは“何が原因で”起きているのか?
鼻づまりといっても、その原因は大きく 4つ に分類できます。
そして 原因が違えば治療法も完全に違う ため、
まずはこの4つのどれに当てはまるかを知ることが最重要です。
この後、あなたが自分のタイプを理解できるよう
原因ごとに個別コラムへリンクしています。
① アレルギー性鼻炎(季節性・通年性)
そもそも鼻炎によって鼻閉が強くなりCPAPが困難になるだけでなく
アレルギー反応により睡眠の質が悪化する
という負のループをつくる、最も一般的なタイプ。
② 鼻中隔弯曲症(鼻の中央の壁が曲がっている)
強い弯曲は鼻閉の原因となり CPAP 継続を著しく妨げます。
また鼻中隔弯曲の程度によっては寝る姿勢への影響も強くなります。
鼻中隔弯曲の程度が強いと「手術ファースト(CPAP開始前に手術を優先)」になることも。
③ 副鼻腔炎(慢性鼻副鼻腔炎)
慢性の炎症により鼻腔内が腫脹して鼻閉の原因になります。
また膿性鼻汁や後鼻漏があると、 CPAPの空気が非常に不快になり継続困難となります。
ガイドラインでも「副鼻腔炎は優先して治療をするべき」とされています。
④ 乾燥(ドライノーズ)
見落とされがちですが、 CPAP使用者では重要な鼻閉の原因になります。
鼻内の乾燥 → 反応性に鼻汁増加
さらに 鼻粘膜肥厚 → 鼻閉悪化という負の連鎖になりかねません。
室内の加湿だけで改善しない場合はCPAP機器にとりつける加湿器を検討する必要があります。
■ まとめ:鼻づまりを改善すればCPAPは必ずラクになる
何度も繰り返しますが、鼻づまりが改善すると
・CPAP圧が下がり
・平均使用時間が増え
・睡眠の質が改善する
鼻を整えることは、CPAP成功のための“土台”です。
鼻づまりで悩んでいる方は、
まず耳鼻咽喉科を受診して原因を特定し、正しい治療を受けることで、
CPAP治療は本当に大きく前進します。
■ 参考コラム
・「鼻の状態で、寝る向きは変わる ― 無意識に選んでいる“睡眠中の楽な姿勢”」
・「痩せればいびき・睡眠時無呼吸(OSA)は治るのか?」
・「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA):その① 定義・疫学」
・「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA):その② 病態・リスク・合併症」
・「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA):その③ 治療 “あなたの無呼吸は、どのタイプですか?」
【執筆】
星野哲朗
日本睡眠学会 指導医・総合専門医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医