アレルギー性鼻炎はCPAP治療の壁:鼻づまりが無呼吸を悪化させる理由

「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」を主な症状とするアレルギー性鼻炎ですが、かなり多くの方が悩まされている疾患です。

「鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版」の基となった2019年の全国疫学調査に
よると、アレルギー性鼻炎全体の有病率は49.2%でした。

特に主要なアレルゲンであるスギ花粉症とダニ(通年性アレルギー性鼻炎の主原因)
の有病率は以下の通りです。

・アレルギー性鼻炎全体の有病率: 49.2%(国民の約2人に1人)
・スギ花粉症の有病率: 38.8%
・ダニによる通年性アレルギー性鼻炎: 24.5%

CPAP治療は鼻呼吸を基本とするため、アレルギー性鼻炎の有無、さらにその
コントロール状態は安定したCPAP継続の最大のポイント となります。

鼻がつまっている状態でのCPAPが非常に難しいことは、誰でも容易に想像が
つくかと思います。

またアレルギー性鼻炎そのものが、鼻閉だけでなく睡眠の質を低下させる要因に
もなります。

これは睡眠時無呼吸の患者さんだけではなく、小さなお子さんから大人まで
共通する話です。

さらに、睡眠時無呼吸がコントロールされていない状態では、アレルギー性鼻炎を
悪化させる働きがあります。


■ アレルギーと無呼吸は“互いに悪化させる負の連鎖”

・アレルギー性鼻炎 → 鼻閉 → 口呼吸 → 舌根沈下
 → 上気道が狭くなり睡眠時無呼吸が悪化

・睡眠時無呼吸コントロール不良の状態だと
 →炎症性サイトカイン(IL-1 / IL-6 / TNF-α など)が増加
 → Th2 phenotypeが亢進
 → アレルギー性鼻炎が悪化

・アレルギー性鼻炎が悪化すると
 → Histamine / CysLTs / IL-1β / IL-4 が上昇
 → 夜間覚醒が増え、睡眠が分断される

引用文献
Chirakalwasan N, et al.The linkage of allergic rhinitis and obstructive sleep apnea.
Asian Pacific Journal of Allergy and Immunology. 2014


■ 季節要因(花粉・梅雨・秋口)

季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の主な原因植物と季節

春(2〜5月)
スギ、ヒノキ
日本で最も多い花粉症。飛散量が多く広範囲へ拡散。

初夏(5〜7月)
イネ科(カモガヤなど)
河川敷や草地に多い。

秋(8〜10月)
ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ
飛散距離は短いが症状は強い。

通年性アレルギー性鼻炎
主な原因:ダニ、ペットのフケ、カビ
季節性はなく一年中続くタイプ


■ 治療の基本

鼻アレルギー診療ガイドライン」に沿って治療を組み立てていきます。

治療の中心は

・抗アレルギー薬
・ステロイド点鼻薬

重症度や症状に応じて

・舌下免疫療法
・免疫学的製剤
・外科的治療

が選択されます。

まずは耳鼻咽喉科専門医に相談を。

一方、病院を受診する前に自分でもできることがあります。
それはアレルゲンの除去です。

アレルゲンを除去する目的で
・帰宅後や寝る前の鼻うがい
・洗濯物の部屋干し(👉商品紹介:サイナス・リンス スターターキット

治療のサポートとしてとても重要です。


■ プロバイオティクスとアレルギー性鼻炎について

プロバイオティクスとは
“腸内細菌のバランスの改善にて宿主に有益な作用をもたらす生きた微生物”
と定義され,2002年にWHOより“適量を摂取したときに宿主に有益な効果を
もたらす生きた微生物”と定義されています。

日本の「鼻アレルギー診療ガイドライン」において、
プロバイオティクスの摂取は「アレルギー症状緩和の可能性が示唆される」ものの、
現時点では「十分なエビデンスはない」とされており、治療の第一選択肢とはなっていません。

薬物療法やアレルゲン免疫療法と異なり、あくまで補助食品という位置づけですが、
複数のシステマティックレビューやメタアナリシスによって一定のエビデンスが
示されている、乳酸菌株があります。
※ ただし効果には個人差が大きく、標準治療の代替にはなりません。

※プロバイオティクスは、標準治療(薬物療法・舌下免疫療法)を置き換える
ものではなく、あくまで補助的に併用する選択肢のひとつです。


■ まとめ

アレルギー性鼻炎は 日本人の約2人に1人 が持つ国民病です。
そして「鼻づまり」は CPAP継続を最も妨げる症状です。

鼻閉 → 口呼吸 → 舌根沈下 → 無呼吸悪化
無呼吸がコントロール不良だと アレルギーも悪化(炎症性サイトカイン↑)
つまり アレルギー性鼻炎と無呼吸は互いに悪化し合う負の連鎖が生じます。

CPAPを安定して続けるには、アレルギー性鼻炎の治療が必須です。

プロバイオティクスは“補助的選択肢”として一定の可能性がありますが、
標準治療の代わりにはなりません。


■  参考コラム

・「鼻の状態で、寝る向きは変わる ― 無意識に選んでいる“睡眠中の楽な姿勢”
・「CPAP治療のトラブルシューティング Vol.2 鼻づまりでCPAPを外してしまう
・「花粉症の薬はどれを選ぶ? 眠気・運転制限からみた抗ヒスタミン薬の違い

【執筆】
星野哲朗
日本睡眠学会 指導医・総合専門医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医
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