抗アレルギー薬、どれを選ぶ? ― 眠気や運転制限に関する話
レルギー性鼻炎は、鼻粘膜におけるⅠ型アレルギー反応によって起こる疾患で、水様性の鼻漏、鼻閉、発作性・反復性のくしゃみを主症状とします。背景にはアレルギー素因の存在に加え、血清特異的IgEの上昇、局所マスト細胞や好酸球の増加、粘膜の非特異的過敏性亢進などが関与しています。
近年、アレルギー性鼻炎の有病率は明らかに増加しています。2019年の調査では、アレルギー性鼻炎全体の有病率は約50%に達し、特にスギ花粉症の増加が顕著です。戦後に植林されたスギが成熟期を迎え花粉産生量が増加していることや、気密性の高い住宅構造によるダニ抗原の増加などが、その主な要因と考えられています。小児・若年層においても有病率は高く、10〜19歳では約半数がスギ花粉症を発症しているというデータも示されています。
アレルギー性鼻炎の治療は、抗原回避や生活環境の調整を基本としつつ、薬物療法が中心となります。薬物療法には、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、点鼻ステロイド薬、血管収縮薬、生物学的製剤など複数の選択肢があり、症状のタイプや重症度、生活背景に応じて使い分けられます。
なかでも抗ヒスタミン薬は、鼻水やくしゃみといった症状に対して広く使用されていますが、すべての薬剤が同じ特性を持つわけではありません。
抗ヒスタミン薬には「第1世代」と「第2世代」があります
現在使用されている抗ヒスタミン薬には、第1世代と第2世代があります。
簡単に言うと、第1世代は初期に開発された薬剤で、速効性があり効果はやや強い一方、副作用も出やすい薬です。第2世代は、その後に開発された薬剤で、効果を大きく落とさずに副作用を大幅に軽減することを目的として改良されています。
第1世代抗ヒスタミン薬の特徴
第1世代抗ヒスタミン薬は脂溶性が高く、組織移行性に優れるため中枢神経系へ移行しやすく、眠気などの副作用を起こしやすいという特徴があります。また、ヒスタミンH1受容体に対する選択性が低く、ムスカリン受容体やセロトニン受容体など、アレルギー反応に直接関与しない受容体にも結合してしまいます。
その結果、眠気や集中力低下に加え、口渇、食欲増進、尿閉、便秘などの副反応が生じることがあります。緑内障や前立腺肥大症のある方には使用できない場合もあります。
こうしたデメリットから、第2世代抗ヒスタミン薬の登場以降、第1世代抗ヒスタミン薬が常用薬として使用される機会は大きく減少しました。くしゃみや鼻水に対する効果は第1世代の方が強いとされる一方で、脳への影響が大きく、現在では多くの場合で第2世代抗ヒスタミン薬が選択されます。なお、鼻閉に対しては第2世代の方が有効とされることもあります。
第2世代抗ヒスタミン薬の特徴
第2世代抗ヒスタミン薬は、第1世代の欠点である鎮静作用を軽減するため、親水性の官能基を導入し、血液脳関門を通過しにくい構造として開発されました。また、H1受容体に対する選択性が高くなったことで、他のアミン受容体への結合が減少し、口渇や尿閉などの副反応も少なくなっています。
現在では第2世代抗ヒスタミン薬が治療の主流であり、副作用が少なく、効果の持続性や治療効果のバランスに優れた薬剤といえます。
第2世代抗ヒスタミン薬でも「違い」があります
第2世代抗ヒスタミン薬の中でも、脳内ヒスタミンH1受容体への占拠率には薬剤ごとの差があります。この違いが、眠気や集中力低下、認知機能への影響として現れます。
脳内H1受容体占拠率が低い薬剤では、添付文書上で自動車運転に対する制限が設けられていないものがあります。一方で、それ以外の多くの抗ヒスタミン薬では「運転禁止」あるいは「運転に注意」といった記載があり、日常的に運転を行う方では薬剤選択が重要になります。
このように、抗ヒスタミン薬は「効けば何でも同じ」薬ではなく、効果と生活への影響を含めて選ぶ薬であることが分かります。
市販薬(OTC医薬品)という選択肢
「鼻水や鼻づまり、くしゃみがつらく、耳鼻咽喉科を受診したいが時間が取れない。しかし薬局で薬を買うとしても、どれを選べばよいのか分からない」
そのような経験をされた方も多いのではないでしょうか。
現在、医療機関での処方だけでなく、市販薬(OTC医薬品)として以下の抗ヒスタミン薬を購入することが可能です。ただし、自動車運転に関する制限は薬剤ごとに異なるため、購入時の参考にしてください。
・フェキソフェナジン:自動車運転可(制限なし)
商品名⇒アレグラ® アレルビ®
・ロラタジン:自動車運転可(制限なし)
商品名⇒クラリチン®
・エピナスチン:自動車運転可能だが注意を要する
商品名⇒エピナスチン20RX®
・エバスチン:自動車運転可能だが注意を要する
商品名⇒エバステル®
・ベポタスチン:自動車運転可能だが注意を要する
商品名⇒タリオン®
・セチリジン:自動車運転不可
商品名⇒ジルテック®
症状が比較的軽い場合や、すぐに受診できない状況では、OTC医薬品の購入は一つの選択肢となります。ただし、症状が十分に改善しない場合や、鼻づまりや睡眠への影響が続く場合には、自己判断に頼らず耳鼻咽喉科を受診することが重要です。
※市販薬は手軽に購入できますが、すべての方に安全とは限りません。
妊娠中・授乳中の方、基礎疾患のある方、他の治療を受けている方は、
自己判断で使用せず、必ず医師または薬剤師にご相談ください。