副鼻腔炎とCPAP ― 睡眠時無呼吸の治療開始前に必ず押さえるべき重要疾患

1.副鼻腔の構造と役割(Anatomy & Physiology)

副鼻腔は 4対、
前頭洞・篩骨洞・蝶形骨洞・上顎洞 によって構成されています。
いずれも鼻腔と連続していて、排泄路(自然口)を通じて換気されています。
副鼻腔を覆う粘膜は鼻腔粘膜と完全につながっているため、鼻粘膜の感染は容易に副鼻腔へ広がってしまいます。

■ 副鼻腔の主な機能

加湿・加温(Air Conditioning)
南極でも鼻呼吸で肺が凍らない理由

粘液クリアランス(異物除去)
 汚い空気の場所にいると鼻がどろどろになる現象

共鳴腔
 風邪をひいたときに“鼻声”になる

頭部の軽量化
 首で支えられる範囲に重さを調整

衝撃吸収(クラッシャブルゾーン)
 車の衝突安全性と同じ仕組みで、顔面の衝撃を分散させ脳を守る

副鼻腔は「単なる空洞」ではなく、
人が快適に呼吸し、声を出し、頭を安全に保つための精巧なシステムと考えられています。


2.副鼻腔炎とは(Definition & Classification)

副鼻腔炎とは、鼻腔・副鼻腔粘膜の炎症のことです。

急性鼻副鼻腔炎
多くはウイルス感染を契機に、2次性細菌感染として発症します

慢性鼻副鼻腔炎
遺伝・解剖学的要因・免疫異常・代謝異常などを背景に、
 ウイルス・細菌・真菌の感染や、タバコ煙・粉塵などの異物曝露が成因となります。

多くの症例で上記の排泄路(自然口)の障害 と 粘膜の炎症 により 分泌物の貯留
を認めます。


3.副鼻腔炎の代表的な症状

① 膿性鼻汁・後鼻漏(最重要)
② 慢性鼻閉(炎症+分泌物)
③ 嗅覚低下
④ 顔面痛・圧迫感
⑤ 咳嗽(後鼻漏による)

③以外 は、CPAP治療と極めて相性が悪いものになります。

▼ 重要:ガイドラインが明確に述べていること(強調枠)

『2023年改訂版
循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療』に
関するガイドライン には、次の2点が明記されている。

A. OSAの治療開始前に、上気道疾患の有無を診察することが重要

B. 腫瘍や副鼻腔炎など“治療が必要な上気道疾患”を合併する場合は、
  OSAよりも先に、または並行して治療を行うべき

つまり——

副鼻腔炎を治療しないままCPAPを始めても、安定した治療継続は非常に難しい。

これは医学的にも常識であり、読者にぜひ知ってほしい大切なポイント。


4.治療(薬物 → 洗浄 → 手術)

A.まずは保存的治療から

・ステロイド点鼻
・抗生物質の内服

B.改善が乏しい場合は外科的治療へ(内視鏡下副鼻腔手術)

慢性鼻副鼻腔炎では、鼻副鼻腔粘膜の炎症によって
粘液線毛輸送機能が破綻し、副鼻腔自然口が閉塞してしまっています。

その結果、病的な分泌液が停滞し、炎症の悪循環が続き、慢性化することになります。

治療の要点はこの悪循環を断つことです。

耳鼻咽喉科の外来で行う鼻処置や副鼻腔自然口開大処置や、
生理食塩水による 鼻洗浄(鼻うがい 自宅で行う) は、
病的分泌液を排除するのに非常に有用です。
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5.まとめ:副鼻腔炎の治療は
CPAPの成功・失敗を左右する“重要因子”

副鼻腔炎の症状がある方、
副鼻腔炎の症状にCPAPの使いづらさを感じている方は、
まず一度 耳鼻咽喉科の受診を強くおすすめします。

CTや内視鏡検査で、副鼻腔炎の状態をダイレクトに評価できます。
副鼻腔が整うと、CPAP治療も安定します。

【監修】
星野哲朗(日本睡眠学会 指導医・総合専門医)

 

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