鼻中隔弯曲症とCPAP ― 鼻の中が曲がっていると、なぜCPAPは続かないのか?
■ 1. 鼻中隔弯曲症とは?
鼻中隔は、鼻腔を左右に分ける“仕切り”の構造です。
これが右または左に大きく曲がることで**鼻閉(鼻づまり)**を引き起こします。
軽度の弯曲はほとんどの人にありますが、
日常生活に支障をきたす鼻閉症状がある場合、
臨床的な「鼻中隔弯曲症」と診断されます。
鼻中隔は、前方が軟骨・後方が骨で構成され、全体が粘膜で覆われています。
骨と軟骨の発育スピードが異なるため、ほぼ全員にある程度の弯曲が生じるのは自然な現象です。
しかし、弯曲が強いと鼻閉が起こり、CPAPの安定した使用が難しくなります。
さらに、強い弯曲は実は睡眠姿勢にも影響します。
左に強い弯曲 → **左側臥位(左下)**が増える傾向
右に強い弯曲 → **右側臥位(右下)**が増える傾向
また、慢性頭痛の原因(接触性頭痛)となっていることもあります。
■ 2. なぜ鼻中隔弯曲があるとCPAPが使いにくいのか?
鼻中隔弯曲の程度が強ければ、その分だけ鼻閉が強くなります。
CPAP療法は、鼻から風を送り、咽頭に陽圧をかけて虚脱を防ぐ治療です。
したがって、鼻づまりが強いと治療そのものが成立しません。
■ 3. 【専門エビデンス】
鼻閉手術とCPAP治療圧・使用時間に関する Systematic Review
有名専門誌 Sleep に掲載された systematic review:
“The effect of nasal surgery on continuous positive airway pressure device use and therapeutic treatment pressures: a systematic review and meta-analysis.”
Sleep 38.2 (2015): 279–286.
この研究では以下が明確に示されました。
● Systematic Review(システマティックレビュー)とは?
世界中の研究を網羅的に集め、信頼性で重みづけし、
最も確かな結論を導く研究手法のこと。
医学的エビデンスでは最上位クラスに位置づけられています。
● 結果(非常に重要)
① CPAP治療圧が平均 −2.66 cmH₂O 低下
(術前 11.6 → 術後 9.5 cmH₂O、7研究・82例、p < 0.00001)
➡ 鼻腔が広がるほど、必要な治療圧は下がる。
② 術前にCPAP非使用だった患者の 89.1%(64人中57人) が術後に使用可能に
➡ 鼻閉が原因でCPAPから脱落していた患者の9割が、術後は再びCPAP使用可能に。
③ CPAP平均使用時間
3.0h → 5.5h(+2.5時間/日)に増加
➡ 術後CPAP使用時間が約2時間30分延長
● 結論(エビデンスに基づく)
鼻中隔弯曲症を含む鼻手術によって鼻腔が広がると、
CPAPの治療圧が下がる
快適性が向上する
使用時間が増える
CPAP治療からの脱落を防ぐ
これらが科学的に証明されてることです。
■ 4. “手術ファースト(CPAP開始前に手術を優先)”になるケースとは?
通常は「CPAP療法を開始してから、鼻閉により使用できない場合」に
鼻腔形態改善手術を検討します。
しかし、以下のようなケースでは、CPAP開始前に手術を優先することがあります。
鼻閉によるCPAP脱落リスクだけでなく
睡眠医療そのものからの脱落リスクも高いと判断される場合
患者さんの意向を確認しながら、
CPAP開始前に鼻手術を提案することもあります。
■ 5. まとめ:鼻中隔弯曲症の治療は CPAPの成功・失敗を左右する“重要因子”
鼻閉によるCPAPの使いづらさを感じている方は、
まず一度 耳鼻咽喉科の受診を強くおすすめします。
CTや内視鏡検査で、鼻腔の形態をダイレクトに評価できます。
鼻腔形態が整うと、CPAP治療はとても安定します。