CPAPのマスクはいつ交換する?──診療現場から見た「ちょうどいい」交換時期

■ マスクは、CPAP治療でいちばん大事な消耗品です

CPAP治療で患者さんの体に直接触れるのは、本体ではなくマスクです。
毎晩、顔に装着し、皮脂や汗にさらされ、洗浄を繰り返す。
消耗品の中でも、マスクほど治療の質を左右する部品はありません。

そして診療現場で感じるのは、マスクの状態が治療効果に直結しているという現実です。


■ 劣化すると、漏れが増えます

マスクのシール(顔に当たる部分)はシリコン製です。
使い続けるうちに少しずつ硬化し、変形し、顔へのフィットが失われていきます。

すると起きるのが「リーク(空気漏れ)」です。

マスクと顔のすき間から空気が漏れると、設定した圧が気道に十分届かなくなります。
機器の記録上はリーク量の増加として表れ、ひどくなるとAHI(無呼吸低呼吸指数)の値が悪化します。

ここで問題なのは、患者さんご本人が「最近、治療の効きが悪い気がする」「CPAPが合わなくなったかもしれない」と感じてしまうことです。
実際には機器や設定の問題ではなく、マスクの劣化が原因というケースが少なくありません。


■ 保険診療では、年1回支給されます

保険診療でCPAPを使っている方には、マスクは年1回、新品が支給されます。
これは「1年使えば交換時期」という目安と一致した、妥当な仕組みです。

ただし、現場で話を聞いていると、実情は2つに分かれます。

1年も持たない方がいます。
装着時間が長い方、皮脂が多い方、洗浄頻度が高い方は、シールの劣化が早く、年の途中で漏れが増えてしまいます。この場合、現実には業者さんにお願いして対応してもらうことになりますが、すぐに対応してもらえるとは限りません。より頻回に交換が必要な方は、自費で購入するしかないのが実情です。

一方で、年1回の交換が不要な方もいます。
肌の状態や使用環境によっては、1年以上経ってもシールの状態が良好な方がいます。診療で話を聞いていると、「支給されたマスクがまだ2つ3つ、新品の在庫として家にある」という方も少なくありません。


■ では、いつ交換すべきか

私がおすすめしているのは、だいたい年1回の交換です。

ただし、次のサインがあれば、1年を待たずに交換してください。

・シールが硬くなった、変形した、変色した
・同じ装着感なのに漏れが増えた
・機器の記録でリーク量が増えている
・マスクを強く締めないと漏れが止まらなくなった

特に最後の「強く締める」は注意が必要です。
漏れを止めようとしてヘッドギアを強く締めると、今度は顔の圧迫痕や皮膚トラブルの原因になります。
締めて漏れを誤魔化すのではなく、シールそのものを交換するのが正解です。


■ 自費で購入されている方へ

保険診療では年1回の支給がありますが、自費で機器を所有されている方は、消耗品の交換はご自身の管理になります。

治療の質を維持しているのは、本体ではなく日々顔に触れているマスクです。

「本体は問題がない、治療圧等の設定も問題ない、でもマスクは何年も同じ」

診療でこの状態にお気づきになる方は、少なくありません。
せっかくの機器の性能を、マスクが受け止めきれていないのです。

交換目安:マスク(シール)は約1年。
ただし上記のサインがあれば、目安を待たずに交換してください。


■ まとめ

マスクは小さな部品ですが、CPAP治療の成否を握る、とても大事なパーツです。

年1回を基本に、劣化のサインがあれば早めの交換を。
「まだ使える」ではなく「ちゃんと効いているか」で判断していただければと思います。

■ 参考商品

「AirFit N20 ネーザルマスク(ResMed製)
」
「AirFit P10 ネーザルピローマスク Airsense11専用(ResMed製)」
「Eson2 ネーザルマスク(Fisher & Paykel製)」
「Brevida ネーザルピローマスク(Fisher & Paykel製)」


【執筆】
星野哲朗
日本睡眠学会 指導医・総合専門医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医

 

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